日本茜染色の不思議

日本茜の染め色は、1300年前の古き頃には、「緋」色、「茜」色、紫根と重ね染して「濃緋」色等、天皇を中心に高貴な方々に親しまれていた色です。(左の色が「緋」色に近いと思う。)

 

その当時は、水に浸けて滲み出てくる黄色い色素を如何に除去するか、と共に、その後に現れる「赤い色素」を抽出するかに、技が有ったようで、お米を使っていたようです。

 

ところが、鎌倉時代にその技が絶滅し、今の世では、植物である「日本茜」自身が、殆どの日本人から忘れ去られ、又その染め物は幻と化しているのが現状なのです。(奈良正倉院には、約150点の緋色の裂地等が現存している。)

 

日本茜の色をどうにかして、現在の世に広めようと活動してきて10年が過ぎた今、日本茜の赤い色「緋」色の再現ができ、今また、写真右の「紫」色も日本茜の煮出し液から染める事も出来るようになってきました。それが、写真の右側の色なんです。

 

この10年の我が日本茜普及活動の変遷の中で、橙色が染まり、赤色が染まり、黄色が染まり、今、この紫色も染める事が出来るようになってきたのです。

 

媒染剤を変えずに、煮出し方と染め順のみで、これだけの色を染める事が出来る植物には出会えたことが無い。

 

夕焼けの空によく現れる、「あかね空」も茜色単色という空色は有りません。太陽、雲の表情により、黄~橙~赤~紫の色が模様となって浮き出てくる訳で、日本茜がその表情を表現できる色素を有しているという事なんですね。非常に不思議、魅力的、魅惑的と言える雑草なのです。

 

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コメント: 2
  • #1

    梅田正之 (水曜日, 15 7月 2020 18:54)

    畑の管理、茜の管理、染めの作業等々、お忙しい中での執筆活動は大変なことと思いますが、杉本さんにしか出来ない貴重な取り組みであると思います。いずれ、ある程度の分量がまとまった段階で出版することも視野に入れて、ぜひ、先長く頑張ってください。楽しみにしています。ただし、お体はくれぐれもお大事に。ご無理のないようになさってくださいね。

  • #2

    杉本一郎 (木曜日, 16 7月 2020 08:57)

    梅田 さま コメントありがとうございます。
    何しろ、日本茜の栽培、染色等については、10年間超の経験が有りますので、思いと共に経験で知り得たことを、僭越では有りますが、少しづつ開示していきたいと思います。